インタビュー#10 おかっち
インタビュー
2020.03.21記事更新
インタビュー#10 おかっち
すぎ
インタビュー第10回目はおかっちです!前回よっちゃんからのバトンを受けました。おかっちは一番最初の若者会議の時から参加をしていて、仕事はお隣福山市の市役所職員でもあります。
おかっち
お久しぶりです、今日はどうぞよろしくお願いします〜。
すぎ
おかっちはとっても会話が整理されていて、よっちゃんからの指名理由もそれでした。ちょうど1年前にぼっけーまち会議の「文化祭」で講師をしてくださったゆみさんも、「おかっちって方すごいね、話し方とかプロみたい」と言われてたくらいだそうですよ。
そこで気になったんだけど、おかっちは打合せや座談会のような話し合いをまとめる役割の「ファシリテーション」の仕事とかをやってたの?
おかっち
いやいや、やってない(笑。
強いて言うなら職場の研修があったり、個人的に参加してたセミナーがあったくらいかな。大学では一応教員免許をとったからそこで授業形式のものも経験できていたかな。
すぎ
あ、教育の勉強をしていたんだ。おかっちは教育関係のプロジェクトをまち会議でしてたもんね。人に教えることに興味があったの?
おかっち
教えることに興味があるって言うよりは、できることなら大学に残って研究を続けたかったかな。
大学では最初、哲学を学んでいたんだけど、大学生活の中で方向が変わり、美術史の研究をするようになったのよ。
すぎ
へー!意外!想像がつかなかった。
おかっち
美術史と聞くと西洋の方をイメージする人が多いと思うけど、自分は絵巻とか仏像の「和」の方。東京の大学だったから博物館や美術館によく行ってたよ。上野が大好きだったね。
すぎ
ちなみにどんなことを研究してたの?また哲学から美術史に変更したいきさつは?
おかっち
まず哲学ってテキスト研究なんだよね。言葉を通して物でない抽象的なことを研究してたんだけどそれに違和感を感じるようになって、もっと具体的なものに興味がいって美術史に進んだのよ。そしてその中でも興味が湧いたのが「和の美術」だった。
すぎ
なるほど。どういうところが魅力だった?
おかっち
仏像の話でいうと、たとえば、奈良の法隆寺の五重の塔の1階には塑壁(そへき)ってのがあって。
仏像を使って仏教の経典のある場面を、ある意味絵画的表現で配置しているものがあるんだけど、それって一場面を描いているようで、よくよく見ていくと経典の中の異なる時系列の話が同じ一つの画面の中に要素として盛り込まれている。
単に一瞬を切り取ったようで、そこには時間の流れがあるよっていう、そういう表現方法に興味を持ったんよね。
法隆寺五重塔塔本塑像(東面 維摩経変相)西川杏太朗『日本の美術255 塑像』至文堂
すぎ
おー、単に立体の3次元ではなく、時間を盛り込んだ4次元だったんだ!
おかっち
そうそうそう。そして大学院まで進んで、大学院では絵巻を対象にそういう異時同図表現について、修士論文ではその研究していった。
すぎ
へーなるほどー。
哲学から入ったわけだけど、哲学に興味を持ったのはいつくらいからなの?哲学に興味が持てるということが自分にとって異次元だからなぜ哲学なのかを知りたいかも。
おかっち
哲学に興味を持ったのは、高校の時からだね。最初は大学で心理学に行きたいって思ってた。だけど高校の時に予備校でセンター試験対策で受けた倫理の授業があったんだけど、その内容がすごく面白くって。そこで哲学に興味をもってしまって大学でもはじめは哲学を研究をしてたって話なんだよね。
すぎ
なるほど。
おかっち
もともと、(理論よりも実用に重きを置く)実学に興味がなくって、文学部に行って思想やテキストの研究か、理学部で理論の研究したりしたかった。具象よりも抽象が好きだったんよ。個別具体な何かを作るよりも、もっと広い概念について考えていきたいってのがあった。
まあ最終的には具象にいったんだけど(笑。

すぎ
なんか僕は物を作る仕事で、真逆なだけにその感覚とても新鮮だわ。 それからどうして地元の公務員に進んだの?
おかっち
最初から役所に行きたかったわけではないな。田舎の長男だからってのもあったし、将来子育てすると考えた時に、東京ではしたくないなって思って。
あと大学院までいって、このまま研究だけで生活していくには厳しいかなーって思いがあって、就職活動しようかなって思ったときに、たまたま高校の同級生が福山市役所で働いてて、「福山市役所を受けてみれば?」っていう誘いを受けて。そしたら受かって、その縁で福山市役所で働き始めて今に至るって感じかな。
すぎ
なるほど、アカデミックで食っていくのはほんと大変ってのはとてもわかるし東京で子育てにイメージが湧かないってのもとても共感する。それにおかっちみたいな人が地元にもどってくれたのは地元にとてもプラスで良かったし僕も出会えて良かったと思う。
あと東京と比べて岡山は自然が多くて近いってのはかけがえがないよね。
おかっち
そうそう。自分の経験に即して、自分の半生を振り返ったときに良かったって思うから。同じような環境で子育てしたいなって思った。
すぎ
笠岡は郊外の田舎って感じで自然と隣り合わせ、福山や倉敷、岡山は栄えているけどちゃんと空が広く見えるのがとても居心地がいいなって思う。ちなみに奥さんとは東京で知り合ったの?
おかっち
いや、こっちに帰ってからだよ。奥さんは(岡山県の)津山出身で、その中でも僕と同じくらいなかなかのディープな田舎出身だよ(笑。すぎちゃんの奥さんは東京の人だよね。笠岡に来るのは抵抗とかあるんじゃないかな?
すぎ
田舎という場所自体への抵抗はないはず。とはいえ距離が結構離れているからそこは大変だよね。田舎暮らしとか地方移住とかは今でこそメジャーになってはいるけど、距離が距離だけにハードルは高いよね。そういうのってみんなどう思っているんだろう?
おかっち
うーん。都会の人を田舎に連れてくるには、田舎生活に対してある種幻想を持ってもらうっていうのはすごく重要だと思っているんよ。
その「ファンタジー」でまずは突破口ができる。そしてそのファンタジーにうまくマッチする人は定住するし、ファンタジーが砕かれると帰っていく人は帰っていく。
すぎ
おおお、なるほど。確かに。おかっちの奥さんはどうなの?
おかっち
それは逆で、妻は田舎生活のリアルを知り尽くしているから、ファンタジーを全く感じていない(笑。
すぎ
ははは、なるほど!
おかっち
やっぱり、地域おこし協力隊も最初はファンタジーがあっての応募だと思うんだよね。それでいろいろあるんだろうけど、定住率は30%程度でなかなか根付かない。それはしょうがないっていうか、普通で当たり前だよね。

すぎ
さて、インタビューでよく聞いていることなんだけど、まち会議に参加したきっかけってなんだったの?
おかっち
それは単純に面白そうだなって思ったからかな。あ、もちろん笠岡市役所から参加者募集の案内が届いたってのは大きいけどね。
すぎ
一番最初の会から参加してたよね。その時の発表から整理されたキレッキレな発表をしてたのを覚えてるよ。
おかっち
いやいや、そんなことはないと思うけど(笑。参加したのもやっぱり街に活気がないなってどこかで思ってたからだと思う。東京に数年住んでいるとやはり笠岡の街に活気がないって思ってしまうし、何とか活気のある街にしていきたいなって思うんだけど、でも東京の縮小コピーを作ってもしょうがないし。。何か別の形で街を活性化させる取り組みに関わりたいってのがあったね。
すぎ
うんうん。やはり「街」っていうキーワードは市役所で働いてて興味を持ち始めたの?
おかっち
当時所属していた課は人事だったんで、直接的に仕事を通してっていうのはあまりないんだけど、市役所で働いているからってのはもちろんあると思う。 それともうひとつ。自分の人生で街という切り口で影響を与えられたのは、橋本徹さんの存在があったんだと思う。僕は維新政治塾に行ってた時期があって、政治の力で大阪っていう街が活性化したのを目の当たりにしたんよね。
すぎ
おおお、維新政治塾に行ってたんだ。僕はあまり詳しくないんだけど、そういう街の活性化は肌感覚でわかるものなの?
おかっち
やはりビジネス的なものはわかりやすく変化したと思う。大きなプロジェクトが動き出したりね。ビジネスでないとこでは、例えばシニア世代への財源を若年世代に回すような改革をしたり、あと西成の街が、変わっていったりしたね。
すぎ
おお、西成と聞くとやばい街って印象があるね。
おかっち
そうそう、治安が悪いって印象があったんだけど、その街をある種特別扱いして重点的にテコ入れしていったんよ。行政って暗黙の了解で、「どの地域も平等に」扱うってのが当たり前だったけど、反対意見も飲んで西成に集中特化した施策を行った。ゴミの回収を2倍に増やしたりなんやかんやと。
そうするとまちが変わってきたんよね。最近では駅前に星野リゾートのホテルがくるような変化が起きている。
そういう変化を体験して、もちろん大阪の方法論がそのまま笠岡や福山で使えるわけではないけど、変化は別の地域でも起こせるんじゃないかって感じた。
すぎ
へー、すごいいい体験をしたね。そんな体験をしたおかっちは、市役所でこういうことやりたいってのはあったりするの!?

 

おかっち
うーん、役所って基礎自治体、住民に一番身近な自治体だから、その役目として街をより良くしていくお手伝いはしたいなと思っている。めっちゃ模範解答だね(笑。
すぎ
いやいや(笑。いきなり質問されても答えれないよね。。別に短期的でももちろん長期的でも思ってることって他にない?
おかっち
今後のことで、、あ、そうだこれ言わなきゃ!
すぎ
はい!
おかっち
行政の仕事って、極論すれば利益はでないけど社会にとって必要だとコンセンサスが働いているものをやるっていうのが仕事なんだよね。
すぎ
ですね。
おかっち
でもそれは時代によって変わっていくと思うんよ。時代が変われば必要なサービスも変わってくるし、今まで見えなかった需要も見えてくる。いろんなイノベーションによって利益がでなかったものが利益がでるようにもなる。
今、行政の中で仕事をしていて、これって収益事業で民間でできるんじゃないのかなって思うことが実際いくつかあるくらいだし。
そういうのって、今後は行政がやるんじゃなくて、民間がやった方が地域に仕事を生むし効率的な側面も出てくると思うんだよね。
まだ「これだ」って計画には至らないけど、いずれはそれを民間として仕事にし、事業を起こすことができたらいいなって思っているよ。
すぎ
おおお。それは誰かにやってもらうのではなく、おかっち自身がやるって意味で!?
おかっち
もちろんそのつもりで!
すぎ
すごいな、僕も協力したいよ!
おかっち
ありがとう。いずれにしても地域に仕事を作っていけたらいいなと思っている。外から仕事を持って来ることは大事だけど、外から持ってきた仕事は撤退という形でまた外に出ていってしまう可能性はある。地域に根ざした仕事は、そのまま地域の財産になり続けるんじゃないかなと思っているから。ぼやっとしかしてないけど、でもこういう仕事ができたらって思っているよ。
すぎ
あーー、いい話聞けました!
なんかすっきりしました。ぜひとも地域の仕事、見つけて形にして欲しいです!
長い時間、どうもありがとうございました!
インタビューは岡山駅前で聞きました
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